共同で生産しておられる
共同製茶組合長が西山勝行さんです
語っていただきました
■京都府相楽郡和束町
和束町は鷲峰山を挟み、宇治田原町の南側に接する町です。京都屈指の茶どころであり、鎌倉時代、慈心上人が鷲峰山でお茶の栽培を始めたのがルーツとされています。とくに香り高い煎茶が有名で、現在は宇治煎茶生産量の約4割を占めています。また、碾茶は日本で1、2を競う生産量です。
■土と霧と人の技が育む煎茶の旨み
製茶の機械を共同購入し、運営しているのが和束町白栖共同製茶組合です。平成5年度の設立で、蒸しから乾燥まで、コンピュータ制御で行われるFA型工場を保有しています。
「正組合員5名、準組合員15名としてスタートしました。これくらいの規模の工場を造るには、組合全体で20haの茶園を有していることが条件だったのです。しかし、生産者の高齢化もあり、15年が過ぎた現在は正・準合わせて15名の組合になっています」。
組合員は自園を持ち、摘んだ茶葉はこの工場で荒茶に加工して袋詰めされ、矢野園をはじめとする問屋に運ばれます。
和束町の茶園は山の合間にあり、煎茶を中心に、玉露、かぶせ茶、碾茶、番茶などが生産されています。とりわけ煎茶の香り、味わいは全国的に有名。それを表すように荒茶の平均単価もキロ当たり例年4,000円弱と、かなりの高値が付けられています。
「川が流れる盆地であること、霧が立ちやすいこと、寒暖差の激しい気候であることなどが美味しいお茶のできる条件とされています。和束もまさにそのとおり。春には和束川から霧が立ち、お茶の旨みをじっくりと育んでいるのではないでしょうか。土も日本では珍しく、少し移動したら地質が異なっています。水はけの良さはもちろん、こうした地質の変化もお茶の旨みに関係しているのかもしれません」。
■自然の循環を大切にするエコファーム
正組合員6名のうち、西山さんを含む3名が「エコファーマー」に認定されています。エコファーマーとは農林水産省が平成11年に制定した制度で、この地域ではNPO法人「わづか有機栽培茶業研究会」が中心になってエコファームに取り組んでいます。
「基本は土作りです。即効性ではなく、肥効調節型肥料をどう計画的に使うかが問われます。お茶の旨みを増すには有機質肥料を多くし、アミノ酸を増やすことが第一ですが、和束では以前から有機質肥料を使っていて、それほど難しいハードルではありませんでした。ただ、消毒が頻繁にできないという点では少し苦労しました」。
茶樹に集まる害虫がいて、その害虫の天敵もいます。天敵まで駆除すれば、生態系のバランスが崩れてしまいます。
日本では無農薬イコール安全というイメージがありますが、化学農薬、化学肥料は人体に害を及ぼさない基準を農水省が設定しています。ですから、必ずしもイコールではないというのが西山さんの考えです。これを遵守するため、京都の生産家は5、6年前から率先して、どのような薬剤、肥料を何回使ったかを記録し、二次加工の問屋に申告するといった取り決めが約束ごとになっています。
■あらゆる自然がお茶の味わいに関係
「毎年同じ場所で、同じ肥料を与えていても、一度として同じ味わいのものができません。それがお茶作りの難しさです。気候や土、水などさまざまな要素が絡んできます。工業製品なら同じ規格のものを作るのも容易なんでしょうが、農業にそれはありません。だから苦労もしますし、逆に予想外の喜びもあります。いずれにせよ、宇治煎茶の4割を和束が担っているという誇りは強く感じています」。
最後にこれからの抱負をお聞きしました。
「これは私個人の抱負ですが、息子が農業を継いで3年目になります。和束の茶作りのいろんなノウハウを教え、茶園の規模ももう少し広げていけたらと考えています」。
800年以上の歴史をもつ和束茶。その風土や先人の工夫が若い世代に受け継がれていく。農業と宇治茶の発展において、大いに期待したいことです。
※写真説明
1:組合長でありエコファーマーの西山勝行さん
2:オートメーション化された工場内和束町白栖共同製茶組合の製茶工場