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和束町 生産家 吉田豊さん

 

京都府下最大の茶どころ・和束町は比較的若い生産家さんが多く、

yosidasann.jpg独自の栽培法や製茶法の研究にも熱心です。

今回ご登場いただいた吉田豊さんも機械揉みのかたわら、

手揉みの良さを探究し、

自分なりのお茶を作っていきたいとお考えのようです。

新茶の時期が近づく4月、茶園の前でお話をお聞きしました。


■喜びと辛さが重なる新茶の時期

 防霜ファンが整備された北向き斜面に、約7反の茶園を所有されている吉田豊さん。手入れの行き届いた茶園で栽培されているのは煎茶の代表品種「やぶきた」のほか、「おくみどり」「めいりょく」といった個性派の品種です。wazuka_tyaenn.jpg
 「お茶をやり始めて10年。今年が一番早い時期に摘採できるかなと思ったのですが、先日、積もるほどの雪が降った影響で、摘採のタイミングも少しずれそうです。たぶん今年も去年並みの時期になりそうですね」。
 今年のお茶の出来具合は、と尋ねてみると「分かるのはもう少し先。摘採の10日ほど前、葉っぱが2枚ついた時点で、葉の色を見るとどれだけ肥料がのっているかがわかります。とは言え、刈るときの気候で出来は変わってきます。刈ろうと思っている日の前の晩が冷え込んでしまうと、木は養分を下ろしてしまうのです。こんなに寒いなら芽に養分を送っている場合じゃないと判断するのでしょう。そうなると新芽自体の品質はあまりよくないことになります」。

 どの収穫物も気候に大きく影響されますが、茶木ほどにデリケートな植物はないのかもしれません。
 例年なら4月下旬、一番茶の摘採は朝の7時半からスタートし、5人がかりで行います。先行の2人が覆いを外し、後の2人が摘採機を操作。最後の1人が収葉袋を持ちます。刈るのは斜面の下側からで、重くなった収葉袋が新芽にかぶさるなどして折れるのを防ぐためです。
 その間、吉田さん自身は自分の製茶工場で待機し、搬入後の作業の準備を行います。
 「工場へ生葉が最後に入るのが午後5時半くらい。順番に処理し、蒸しの機械に入れるのは最終7時頃です。そこから葉振るい、揉み、乾燥までの全工程を通すのに5時間はかかります。父の代では茶摘みの10日間ほど、午前2時までの作業というのが普通でしたが、ぼくの代になり、どうにか0時までに終わろうということを目標にしています」。

 生産家さんにとって新茶の時期は一番の喜びのときでもあり、最も過酷な時期でもあるのです。

 

■手揉みの可能性を追究したい

 吉田さんがお茶の栽培に携わったのは10年前です。以前は大手ハウスメーカーの住宅展示場で6年ほど営業のお仕事をされていました。
 「サラリーマンであかんかったら、家に帰ればしまいやと思っていて、気楽にやっていました(笑)。和束に帰ってきた一番の理由は父が病気になったからです。長男であり、代々続いてきた茶園は放っておけないとの思いがありました。会社勤めと大きく違うのは、すべての責任が自分にあるということです。たとえば、葉っぱが変だったとき、病気か否かをすぐに判断できる知識が必要になります。何か分からないけれど、とりあえず農薬を撒いておこうというのではお金もかかるし、今の風潮からは許されませんしね」。
 幼いときから茶園の手伝いをされていたとはいえ、管理する側になると苦労は異なります。吉田さんの場合も自分で判断できないことは親や同業の仲間、先輩に尋ね、本を読んでさまざまな知識を身につけられたそうです。
 

そんな吉田さんの現在の関心は「揉み」の工程です。機械任せにせず、手揉みにすればお茶はどう変わるのか。
 「今はコンピュータ管理で、茶葉を入れたら機械が自動的に揉みます。失敗はないけれど同じものばかりができます。茶葉を揉んで得るものは何もないんです。香りも抜けます。だけど、機械ではなく、人がこんな揉み方をすればどうなるか。香りに違いが出るのかどうかが分かってくれば、私たち生産家の仕事はもっと面白くなると思うのです。全部手揉みにするのは体力的に無理がありますが、一部を手揉みにし、それによって自分なりのお茶を作っていきたいなというのが今の抱負です」。
 

生葉はさまざまな人の手を伝ってお茶に仕上がります。しかし、品質の根本は生産家さんが支えます。生葉を前に生産家さんがどれほどの探求心を持つか。それが今後の宇治茶の将来にもつながっているように思いました。


※写真説明1:「今年も美味しい新茶をお届けします」と吉田豊さん

2:防霜ファンが守る茶園

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