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シリーズ ~お茶のある風景2~

『お茶がもたらす珠玉の一滴』

私の朝は1杯のお茶から始まる。お茶を神棚と両親の霊前に供え、礼拝を済ませた後に自分も熱いお茶を飲む。ただこれだけのことなのにとても清々しい気持ちになる。
 けれども、昔の私は仕事で忙しい日々が続き、毎朝ゆっくりとお茶を飲んだという記憶があまりない。それがここ数年は景気の低迷のせいか、お茶をじっくりと味わえる時間が持てるようになったのである。不況にも時には良い効用があるようだ。
 忙しかった頃はお茶を淹れることを煩わしく思ったものだが、そんな自分が今ではとても恥ずかしい。お茶は健康にいいだけでなく、生活にうるおいを与えてくれる。お茶の香り・旨み・さわやかな色には人の心を癒す不思議な力があるし、お茶を淹れること自体にも深い意味があると思う。
 急須でお茶を飲むには、お湯を沸かし、湯冷ましをかけ、茶葉から旨みが出るのを待つなど、少しばかりの手間がいる。だからこそ、気持ちに余裕が必要だ。心を込めて丁寧に淹れたお茶には、私たちを「なごみ」や「やすらぎ」といったもので包んでくれるオーラのようなものがある。
 もしも、時間をさかのぼって、あの頃に戻れるならば、「忙中閑あり」ではないけれど、essei.jpg忙しい中にも時間をつくり、お茶を楽しむ心のゆとりを持ちたかった。1杯のお茶をじっくりと淹れて、ゆったりとした時間の中で自分という人間を見つめながら味わう。そんな時間の過ごし方が出来ていたら、私の人生や物事に対する考え方も随分と違っていたことだろう。しかし、気づいたときが出発点だ。これからは少し冒険をして、毎日使う茶葉や茶器にもこだわってみたい。小さな贅沢を楽しむうちに大切な何かを発見できたならば、これほど大きな幸せはないのだから。
お茶の時間がもたらす、豊な人生のための珠玉の一滴を探したいと思う。

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